立涌 菊菱と桐
着物はかたちが同じなので洋服のように流行はなく、親から譲られた着物もずっと着られる、とは言われるがそんなことはない。形は同じでも色や柄に時代の傾向がある。
中古で出てくるのは赤系が多い。
親に譲られた着物の中にコートがなかったので、とりあえず何か1枚、と検索するとやたらと赤いコートが出てきた。
1960年〜70年代、もう少し後までその傾向はあったのだろうか。
50代を過ぎてから初めて習った着付けの先生は、「お母さまの着物を着るのもいいけど全部譲られたものを着ると『レトロなひと』になってしまってみっともないですよ。」
着付け教室で着物や帯を売るからそう言うのか、と最初は反発していたけれどあれこれ本や雑誌のバックナンバーを見ていたらやはり同様のアドバイスがあった。
「帯か着物かどちらかは新しいものを」
柿色の帯。
立涌という水蒸気が立ちのぼる様子をあらわした文様は平安時代からある有職文様で、その内側に桐と菊菱の吉祥文様が加わっているので普段着というよりお祝いの場に向けた柄といえる。(下記のリンク先の本「帯の常識と帯あわせ」を参考にした)
この本のカバー内側に赤い帯を締めた写真がモデルになっていた本が関連本として紹介されていたので発行年を見たら2005年だった。
さっき書いた赤い帯が普通だったのはつい最近までだったのだろうか?もう1冊、赤い着物が表紙になっている同様の本は2000年発行。ピンクの着物に菊の柄の帯を締めているモデルの後ろ姿は、たぶん30代くらい。 この時代にはまだこれが普通だったかどうかは、その当時着物に全く興味がなかったのでわからない。
2018年現在、確実に今の30代は赤系の着物を着ることは少ない。レトロな人をアピールするアンティーク好きやパーティーならありだけど。