万筋
「縞はね、細い方が粋なんですよ」
東山七条にあった芸大の入学試験会場で、受験生の色彩構成の画用紙をドライヤーで乾かしながら試験監督の先生が、帰り支度が少し遅れてまだ教室にいた私たちに言うともなくつぶやいた。
その時の試験の課題は「縞を描け」とだけあったのか他に条件があったのかは覚えていない。私が描いたものは細かったけれど、赤を基調としてカラフルで粋とは言えない配色だったと思う。
ちゃんと覚えていないけどたくさん色を使えと教えられていたのでそのために縞は細い多色縞になった。
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縞を見るといつもこの時の事を思い出します。
その時の試験の採点基準に粋かどうか、があったのかもわかりません。ただ、京都の美術の中心で粋、というものがどう扱われているのか今頃気になり出しました。
江戸の粋、に対して京都のはんなり、ともよく対比されますが、今そんなに地域差があるともおもえません。江戸小紋の粋、その中にも縞はあります。
代表的なものが万筋。
1枚ほしいと思いながら今だにご縁のない着物です。
画像の着物はほんの少しの間ご縁がありましたがサイズの合う方に引き取られていきました。千筋と万筋、どの細さがその境目なのかまだわからないままタイトルにしています。
こちらの型紙図鑑に縞の種類がある程度見つかりましたが万筋がどれくらいの細さなのかは不明です。
冒頭の試験の時に私が描いた色彩構成のようにとにかく縞の数が多いのは「やたら縞」というそうです。