梅の種 文様記録

柄や色の覚え書き

双鳥華紋(赤地鴛鴦唐草紋錦)

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双鳥紋

小紋四霊、更紗に手間取ってしまった。

トップ画像のキャプションを双鳥紋としたのは、更紗図録を見たときに鳥が向かい合う図に双鳥紋という説明があったからだった。

 

歴史も染織史も中学高校大学とカリキュラムにはあったけれど忘れたことの方が多いし、知識も偏っていて穴だらけなので迷ってしまって戻れなくなっていた。そもそもここでは手元にある着物や帯の模様について好きなことを書こうとしていただけで、染色の解説をするわけではなかった。

 

その迷っている間にちょっと面白い模様のものなどがやってきてはフリマでどんどん次の引き取り手に渡っていったので書きそびれた柄も色々とあって悔しい。

 

着物の柄もロングテールみたいなもので、多く使われる柄がおぼろげにつかめてきた。前回までの四霊で思ったのは、動物と鳥だと圧倒的に鳥が多いんじゃないか、ということ。

鳳凰の柄はいくらでもお目にかかる。麒麟を探してジャワ更紗の図録をひっぱりだしてきて眺めていたら鳳凰の柄はたくさんあった。鶴も多い。あまり私のところには回ってこないけど。具象的な鶴、デザインされた鶴、いろいろある。

 

ここまで書いてきたところで、そうか、こういう鳥は双鳥紋というのね、正倉院にありそうな柄かな、と結局また検索していたら、あった。

知りませんでした。

 

赤地鴛鴦唐草紋錦 
shosoin.kunaicho.go.jp

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宮内庁正倉院宝物の一つ、正式には「赤地鴛鴦唐草文錦大幡脚端飾 第8号」



shosoin.kunaicho.go.jp

 

 

昨年の正倉院関連の展覧会は観ていないし、正倉院には2、3度は行ったけれど宝物殿が見られる時期だったかどうか、それでも歴史の教科書に出てくる「玉虫厨子」は実物を見たような覚えがある。(出品目録にはありませんでした)また、東京国立博物館に呼ばれてしまったようだ。

 

正倉院・双鳥とキーワードを入れて出てくるのは「龍村美術織物」のこの柄の小物の販売や、他の正倉院や双鳥の柄で販売しているものなど。単純に検索したら出ないのね。正倉院にある裂地とわかっていなければ最初に出てくるのが龍村美術織物で復元された柄とその関連商品、さらにその商品のオークション、同じ柄の他の商品などなど。宮内庁正倉院のページにはすぐにたどり着けません。

 

やはりきちんと勉強しなさい、ということか。

 

柄についての解説は龍村美術織物ブログをご参照ください。

http://blog.livedoor.jp/tbo3251/archives/50358839.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、トップの画像はご縁があって私の手元にいる名古屋帯です。

メルカリに出品していますが、龍村美術織物のものではありません。 

ご予約がついて売れました。

https://item.mercari.com/jp/m17253395581/

麒麟はいない

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鳳凰で検索したところで知った「四霊」に合わせて4種類柄を並べてみようと思ったものの、麒麟がどこにもない。2月に入ってからずっと着物や小物、手持ちの本で麒麟を探していたけれど見つからず、缶ビールを買いました。

 

着物の柄じゃないので画像も小さくしました。

 

麒麟の柄は世の中にあるのか?と思って近所の図書館で探して見たけれどやはりない。

 

短時間でざっと工芸の棚を探したところ麒麟の柄を取り上げている本は2冊しかなく、そのどちらもが1枚ずつだけ。本はリンクを貼るわけにはいかないので図も載せませんが、ひとつは和更紗の図録の中に、もう一つは世界の服飾文様図鑑の神格化された生き物の項に、それぞれ1枚だけ。

 

更紗の図録の中には鳳凰はたくさん飛んでました。更紗によくある唐草模様や連続模様には鳳凰の尻尾や羽など曲線的な扱いが多いので模様の中にはめ込みやすいからかと思います。中国の四霊、龍はうねうね長いし髭もあるし、霊亀は尻尾がふさふさ長い。

そうそう、亀の模様はいろいろ検索していたら弓浜絣にモチーフとしてありそうです。とても手が出ませんし、まだお目にかかったことはありませんが機会があれば亀のテーマに追加します(逢えるのかな?)

 

麒麟の柄があまりないなか、検索して出てくるのは、まず「麒麟がくる

それから、「桐竹鳳凰麒麟紋」。

 

麒麟がきた」はその衣装の色使いで賛否両論ちょうど騒がしかった時期でした。

色が派手、鮮やか、カラフル、どぎつい、チカチカする、きれい、ケバい、イマイチ、疲れる、などなど。

どちらかというと賛否の否が多かった印象です。

ドラマだからどっちもありでしょ、というのが私の基本的なスタンスで、大河だからどうだとかいう意見もありますがそこはどうでも。私は市の場面でシルク・ド・ソレイユを連想したので舞台だったらこれくらいの色があった方が映えるかな、と感じてじゃあやっぱりテレビで見るのだったら少し控えめくらいが見やすいかもしれないな、と思いました。

衣装よりも、違和感があったのは植物の緑色のほうです。風景の色合いが、きっとチカチカする、の印象はこちらの方ではなかったか、と思うくらい人工的でプラスチックみたいな、造花のような色が気持ち悪く感じました。まるでゲームやアニメの空間にいるみたいな。

昔の染料は中間色がなく、原色に近いという意見や支配者は色で権力を誇示していたという指摘、一方当時の染色の技術でこの色が出せたのか、とも。どっちでしょうね、色が出せたとしても堅牢度はそれほど高くなく褪色も結構したのではないでしょうか。

だから農民庶民がいつも鮮やかな着物を着ていたか、というとそこは違うんじゃないのかな、その辺りはもうちょっと着古した感じでないと私に、嘘でしょう、という違和感はなくなりません。

かまわないんですけどね、ドラマだから。

毎年大河を見ているわけではありませんが、数年前の柴咲コウ主演の大河はそのあたりうまくバランスが取れていたように思います。架空の人物の龍雲丸(柳楽優弥)の衣装は盗賊団のお頭の荒さと赤い麻の葉柄の派手さ、その反対の直親(三浦春馬)の青の着物の対比がとても好きでした。

 

もう一つ、桐竹鳳凰麒麟紋。

これは昨年が令和元年だったから。

即位の礼の装束の紋様でした。

 

www3.nhk.or.jp

 

キーワードは柄ではなく衣装の方の名前「黄櫨染御袍」ですが、この着物の柄が「桐竹鳳凰麒麟紋」です。

 

柄は下のリンクにありますがきっと着物の柄が気になっていればあちこちで画像は見られたと思うのでリンクのみ。

costume.iz2.or.jp

桐竹鳳凰即位の礼の記事の次にたくさん出てきたのが、雛人形の広告。そらそうです、お雛様の衣装です。この柄を着ています、というのは今年のセールストークになったのでしょう。

 

 元々は「桐竹鳳凰紋」で麒麟は後から付け足されたということですが、ここでも麒麟の影が薄い。どうしてでしょうね。黄色や紫は天子の色で、家来以下、禁色とされて身につけることはできなかった、というのは歴史で習いましたが、麒麟の柄も禁止されていたのか、と検索してみても出てこない。鳳凰に比べたら全然数が違う。柄として、あまり人気がないのか、単に知られていないだけなのか。

鳳凰>龍>亀>麒麟 の順に見かける頻度が下がっていく。

 

とにかく、麒麟というとやはり色柄ではなく、冒頭の缶ビールの麒麟しか出てきません、今のところ。

長くなってしまったし、今回行き詰まってあれこれ調べて検索して、時間がかなりかかったから今度こそ、毎日続くように軽くします。

万年

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万年 亀

鳳凰、龍と続くと残りは麒麟と亀です。

鳳凰麒麟(きりん)、亀(かめ)、竜とともに四霊の一つ」(日本大百科全書の解説)と、鳳凰の時に検索して知ったのですが、亀の柄の着物も帯も小物も、今手持ちの物がありません。明日は麒麟の番ですがそちらもこれから探します。

 

https://kotobank.jp/word/鳳凰-131802

 

亀甲柄なら色々あります。たとえばこういう着物。

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以前ここにアップした帯や着物はおかげさまでどちらも売れました。

 

四霊のうち、亀だけが実在している生物なので(たぶん、麒麟は動物園のキリンとは違いますしね)柄には向かないのでしょうか。

鳳凰についての解説にある中国の四霊については、亀の項にはありません。

亀(カメ)とは - コトバンク

どこまでも現実の亀の簡素な記述でした。

 

鶴亀、とおめでたいものとしてくくられますが鶴の柄の着物よりも亀はずっと少ない。鶴の方が伸びやかで豪華だからでしょうか。

または、亀は色合いもあまり鮮やかなものは少なく地味になるからでしょうか。

 

鳳凰や龍と並ぶ時の亀の姿は実在するかっちりとした甲羅だけの亀ではなく、霊亀というやはり空想上の生き物で、足もやや長く走ったら結構速そうです。

 

 

 

トップ画像は昨年暮れに東京国立博物館に行った時に撮影したもの。

高円宮の根付コレクションです。

中川忠峰 作 1997年 黄楊

でも英文のタイトルはTurtle 亀です。

 

https://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=5765

 

 

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Netsuke Takamadonomiya's Collection

画像につけたキャプション間違えてます。

正しくは  

Netsuke: The Prince Takamado Collection

 

えんじ色の亀甲柄板絞りの着物はメルカリに出品しています。→この文章を書いている途中に売れました。

https://item.mercari.com/jp/m19790407513/

龍紋

最初にこの龍の柄を見た時に、丸い柄にするために、頭と尻尾だけにしたのだと思った。

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龍紋 白

あとから、龍紋という紋があるのだとわかった。

 

龍。

 

伝説の生き物のなかで、最近人気が高いのではない?昨日取り上げた鳳凰よりもずっとよく見かけると思う、画像も、字も。

 

名前に使うことも、平成になってから増えているし、ゲームにもよく出ている気がする。

(私は一切ゲームをしないので家族や身近な方を見ていての印象ですが)

 

以前インスタに龍の織柄の帯をアップした時にこうキャプションをつけた。

 

「もし、龍を現実に見ることがあったら絶対怖いはずなのに柄ゆきになったらなぜ愛らしくてユーモラスなのだろう?」

その時の龍の柄はこんな感じ。

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この帯もわりとすぐに引き取り手が見つかりました。

 

今回最初にあげた画像の帯ももう手元にありません。

メルカリで売り切れました。早かった。

https://item.mercari.com/jp/m82520133480/

鳳凰

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鳳凰飛柄

今週は生き物の柄を続けます。

最初は鳳凰、頭が鶏、鶴が胴体、孔雀の尻尾など3つ以上の生き物の部分を持つ中国の伝説上の鳥ですが、実在の生物の組合せという点、どうしても人間の想像力の限界を感じてしまいます。

 

鳳凰も花も、たぶん雲か霞と思われる形も唐草のように繋げられそうな同じリズムのカーブの柄が均等に配置されていて、アップにしたら結構簡略化されているのですね。

次のような感じです。

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でも、一見してこれが鳳凰とわかるのは着物や帯の柄として、吉祥文様の代表的な柄としてよくある柄だ、と思っているからです。

火の鳥やフェニックスがよくある模様ですよ、と聞いたり何かで読んでいたりしたらたぶん、これは火の鳥です、と言うかもしれません。

 

最近はあまり現金を持たなかったり、使わなかったりですが、鳳凰はお財布の中に時々います。

宇治にある平等院鳳凰堂、その屋根の上にキリッと立っている鳳凰が1万円札に、建物は10円玉にそれぞれモチーフとして描かれています。

たまたま今日は財布の中にあったので画像を追加します。

 

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この帯はメルカリに出品しています。→売れました

 

 

きもの

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国立博物館での小袖を観たのでそのことを書こうとしたら、調べすぎて更新が止まってしまった。

 

専門的にしらべたいわけではないけれど、あれこれ気になると、どんどん検索と本をパラパラめくるのに時間が過ぎてしまう。

調べたことをきちんと書くのではなく、日頃目に止まる着物の柄を記録しようと始めたので、仕切り直して続けることにする。

 

といいつつ、博物館の話。

近々開催される展覧会、「きもの」

いったいどれくらいの数が観られるのか、とりあえずレクチャー付きのチケットを予約してみた。

このチケットはまだ販売中らしい。

IKKOさんのトークショーは早々と売り切れてしまったらしい。そちらの方は300名限定、レクチャー付きは600名限定。

IKKOさんの時の方が、人数が少ないのでゆっくり観られそうでいいな。

 

同じ展示に何度も行く時間はなかなか作れないけれどこの展覧会は2回は行きたいです。

 

 

https://kimonoten2020.exhibit.jp

浅葱縮緬地唐山水模様

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浅葱縮緬地唐山水模様

国立博物館の小袖からもう一つ。

18世紀、江戸時代中期のもの、最盛期の友禅染め

縮緬地を縹色に染め波模様を白上げにして、小高い島にさまざまな唐様の楼閣を友禅染めで表した風景模様の小袖」

 

赤は輸入染料の生臙脂で染めているという。

生?

乾燥と生があるのかと思ったけれどそうではないらしい(うどんのようではなかった)

コトバンクによると臙脂虫の一種が寄生した樹脂から採取するものでショウエンジと読む。うどんのように生や乾燥があるわけではなくそういう名前らしい。

https://kotobank.jp/word/生臙脂-530673

 

ラックカイガラムシコチニールカイガラムシ、原料は虫らしい。日本の染料が草木染めという言葉のとおり植物由来のものなのに比べて国や自然環境が違うと主流になるものも違うということ。

日本で原生の動物性の染料はあるのだろうか。

 

捺染の始まりが身近にある草を擦り付けることで始まったのなら、虫が原料だと…そしてその虫がとても小さいものだと…これ以上は想像するのをやめておこう。

文章には書いているけれど、頭の中はさっきから思考停止している。

 

浅葱、臙脂、それにもう1色黄色系の染料があれば茶系と緑が最初の2色との掛け合わせで表現できる。地の色と合わせて5色。

これだけの色でも当時は特別なことだったのだろう。